ストレス解消法

糊代はお金以外のもので


「金の切れ目が縁の切れ目」という有名な諺もありますが、
これに始まってこれに終わる恋愛関係は悲しいですよね。
私の昔なじみに幼児の時分から頻繁に、「金、金!」と口にする人がいました。
彼の実家は貧困状態にあったわけではなかったのですが、
成人した彼は今、賭博依存に陥った生活保護受給者です。
後になってわかったことには彼の父親が賭博依存者であり、
新婚早々、舅に向かって借金を申し立てたそうです。
昔なじみの彼の両親はお見合いによって結ばれた仲ですが、
借金を願い出る程の前提となる要素については全く知らされておらず、
見合いを運んだ張本人である舅でさえも目を丸くしたそうです。

しかし、それでも夫婦になったのだからとこの婿、或いは夫を舅と妻は離縁することもなく、
彼が心を入れ替えることに一筋の希望を託して、
約30年間、婚姻関係を根気よく継続して来ました。
そして、30年後、この夫婦は完全に破局しました。
この時、妻には既に父親も母親も無く、これからがいよいよ、
配偶者を心の支えとする時に入っての熟年離婚でした。
しかも、度重なる夫の作った借金の尻拭いで、老後を危うくした状態での訣別でした。
ここまで離婚が延びてしまった背景にはこの妻の中の、
“夫を失うことによる自尊心の危機”もあったのです。
それは言わば、彼女にとって大切な名前を失うことでもあり、
彼女は、結婚によって得た自分に未練を強めていたのです。


この点は浪費家の夫に金銭を宛がう流れを作り、
更には、成人して第二の浪費家となった息子にも、
同様の尻拭いを始めることのきっかけとなりました。
しかし、金銭に託した「私を見捨てないで。」の思いは努力も虚しく、
彼は、最終的に彼女の年金や愛車まで奪って逃亡したのです。
片や、男性に見捨てられることを恐れっぱなしの状態にあった妻は、
ほとんど、自分の欲求を明確に伝えなくなっていました。
言うなれば、この男女を繋いでいたものはおべっかであり・・・、
旧来の家制度であり、無駄遣いに対する金銭の補充でした。
そして、もちろん、おべっかはおべっかを超えるものを繋がず、
両親の死別と家制度の崩壊と共に接着要素は消え去り、真正面から、
率直に顔を合わせることも叶わない夫婦だけが残ったのです。
当然のことながら、彼らの間の糊代となって来た金銭も失われ、
両者が、一緒に暮らす理由は無くなってしまったのでした。

もちろん、これを選択してやって来たからにはこれも、一つの男女の形ではあるのだと思います。
しかし、両親、配偶者、子供と繋がれずに途方にくれた、
この妻の姿を知る第三者としての私がいます。
彼女は、病院にかかるお金も危ういのに心の病気にかかってしまいました。
ですから、私は、相手の運命をも一緒に背負う勇気の無い人は決して、
真似るべきではない一つの生き方でもある
と思います。
昨今、賭博依存に陥る女性も増えています。男性も女性も、充分にお気をつけ下さい。
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